一歩後退の原子力発電再稼働

3月9日、大津地方裁判所の山本善彦裁判長が、滋賀県民から出された高浜原発3号機、4号機の運転差し止めの仮処分を認める判決を下しました。これにより、すでに稼働していた3号機は停止され、関西電力の原子力発電からの送電はなくなり、温暖化ガスを大量に放出する火力発電を増加させざるをえない状況に逆戻りしました。

高浜原発3号機、4号機の運転差し止めの理由としては、「新規制基準に適合しているだけでは不十分」ということです。大津地裁の54ページに及ぶ判決文には、根拠が詳細に示されています。

高浜原発3号機、4号機は、2015年2月に、福島第一原発事故を教訓に改定された、世界でも最も厳しいとされる新基準による安全審査に合格しています。このことは信頼してよいでしょう。しかし、この判決文からは、もし想定した地震や津波が起きた時のリスク管理が十分でないと読みとれます。

たとえば、電源系統が破壊された時、予備電源がもし働かなかったら、福島第一原発と同じ事態になります。そして、事故が起きた場合の住民の避難計画が十分ではありません。いくら安全性は保障されたとしても、100%安全はありません。万が一の事故が発生した時のコンティンジェンシープランは作られていないのです。リスク管理の面から新基準に適合しているだけでは不十分だというのが、今回の大津地裁の指摘だと思います。この点では、昨年4月の福井地裁樋口裁判長の、論理性のない主観的、独善的な判決とは異なり、大いに評価できる判決と思います。

これまで、原発本体の安全性だけを考えてきました。しかし、どのような対策を講じても100%安全はありえません。しかしだからといって、リスク0を求めて原発を廃止するというのも愚かです。地球温暖化という別のリスクが迫っています。私たちは原発事故へのリスク管理を十分に行って、原発を上手に利用していかなければいけないと思うのです。

一刻の猶予もありません。地球温暖化のリスクは迫っています。再生可能エネルギーには限界があります。至急原発事故へのリスク管理の検討に入り、早く安全な原発再稼働を進めなければなりません。