オペラや組曲などの多くの曲が含まれているパート譜の作成テクニック

オペラや組曲など、多くの曲が含まれている曲のパート譜を作るには、ちょっとしたテクニックが必要になります。交響曲のパート譜も同じですが、曲が多いので効率よくパート譜作製をする必要があります。

譜めくりしやすい箇所でページ替えすることは一般のパート譜と変わりませんが、その他に、曲ごとに調が変わる、テンポが変わる、拍子記号が変わります。曲ごとにパート譜を作成して印刷したりPDFに変換するのでは、ページを多くなり奏者も煩雑になります。一つのパートは一つのブックにしたいものです。

ここでは、私の経験をもとに、スコアメーカーPlatinum で多くの曲が含まれる曲の奏者に見やすいパート譜を作成するテクニックをまとめておきます。

1. パート譜準備

まず最初はパート譜の準備をします。パート譜面のページレイアウトを決め、表紙を作っておきます。

1.1 楽譜の設定

市販の譜面は菊倍版がほとんどですが、菊倍版の印刷用紙も市販されていないし、印刷できるプリンターもありません。A4版で代用するしかありません。A4は菊倍とほとんど同じ寸法なので十分です。

市販楽譜に近いページレイアウトにすることを考慮すると、用紙設定は右のようにするのがよいようです。

余白は、上下、左右とも12mmに設定します。

ページは見開きページとし、左に偶数ページ、右に奇数ページが来るようにします。

そして、市販の楽譜に近いページレイアウトにするには、五線の設定で、

「標準の五線高さ」を7.2mm

「最大段数を設定」を12段

とします。

細かいことですが、小節番号も見やすいように設定しましょう。

通常「段落の先頭に表示する」でしょう。

フォントは10ポイントぐらいがよいでしょう。

表示位置は、

「水平位置」は左で、

「段落先頭の基準位置を左端にする」にチェックを入れておくと、調号の♯や♭の数が変わったり、拍子記号が入ったりして小節番号が水平方向に移動するのを防ぐことができます。

「垂直方向オフセット」は20Tぐらいにしておくと見やすい位置に表示されます。

ヘッダー/フッターは右のように設定しました。

このように設定すると下のようなページレイアウトになります。

ヘッダーの中央にパート名を表示。1ページ目は表紙にするので、「先頭ページは表示しない」にチェックを入れます。

ページ番号は、偶数ページは左上、奇数ページは右上に表示するようにします。そのため、右のように「%P]を設定します。(うまくいかない時はいろいろ試して見るとよい)

フッターは何も表示しません。

1.2 表紙の作成

1ページ目は表紙にします。

1ページ全体を使って表紙のタイトルをテキストで記入します。

五線を消すために、ページ全体の小節を選択してプロパティーを開き。「マスク」のチェックを入れると消すことができます。

右の写真では、五線が薄く表示されていますが、「マスク表示」をしているので薄く表示されています。右下の青くなっている左側の「マスク表示」を消すと、五線が完全に消えます。

1ページ分の五線を使うのではなく、「段落」メニューの「改ページ」でページ替えをしてもよいのですが、「楽譜の設定」の「五線」を開いて「OK」をする必要性が今後頻繁に生じます。その時に改ページは無視されて、ページレイアウトがめちゃめちゃになってしましますので、この方法がよいです。

2.パート譜の作成

これから実際に演奏するパート譜を作成していきます。

曲ごとのパート譜は、スコアメーカーの「パート譜の作成」で簡単にできますが、演奏者の演奏しやすいように1段の小節数(音符の込み合い具合)を考えたり、譜めくりの位置を考えたりすることが大変な作業になります。

2.1 スコア譜からパート譜の作成

1曲ずつスコア譜ファイルからパート譜ファイルにコピーして調整をしていきます。

2.1.1 スコア譜からパート譜をコピーする

スコア譜からパート譜を作成するには、スコアメーカーの「ファイル>パート譜の作成」で行います。

できたパート譜全体を選択して、これまで準備した最終的なパート譜になるファイルにコピーします。これは、組曲などの1曲分のパート譜です。

パート譜全体を選択したら「小節>小節のコピー」で、全体をコピーします。

コピーしたパート譜を挿入したい先頭位置にキャレットを移し、「小節>コピーした小節の挿入」をクリックします。

下のようにパート譜が挿入されます。ページの先頭に1段空けてあるのには訳があります。これは次の調合の変更で説明します。

2.1.2 調号の変更

オペラや組曲では、曲ごとに調合が変わります。そのために、前に空けておいた段落を利用して新しい調合を記入します。

新しいDdurの調合を入れると、次の段から正しく調合が表示されます。

調合を記入した段の五線を消す必要があります。そのためには、下のように段全体の小節を選択してプロパティを開き、「マスク」のチェックを入れてマスクします。

このようにマスクされて五線が消えます。

2.1.3 曲のタイトルとテンポ記号の表示

オペラや組曲には通常曲のタイトルが付いています。テンポも変わります。あいているところ(ここでは五線を消した段)にタイトルを挿入、テンポ記号を忘れずに記入します。

2.1.4 小節番号の初期化

この曲の先頭の小節番号はろいろな数値になっていますので、小節番号を1にしなければいけません。曲の先頭の小節(不完全小節の場合は次の小節)を選択してプロパティを表示させます。小節番号は前の小節の続きの番号が入っていますので、これを1にします。数字の後ろの()内は「自動」から「固定」に変わりますが、この小節から後ろは「自動」になります。

2.2 読みやすいパート譜のための調整

ここからは、演奏中に読みやすいように、音符の込み具合を見ながら、1段中の小節数の調整をしていきます。読みやすいように、小節を前の段に上げたり、逆に後ろの段に下げたりします。ページめくりが必要な場合は、演奏に支障のないような位置でページめくりできるように調整します。

2.2.1 段落内の小節数の調整

段落内の音符が込み合っている時は、次の段に小節を移動させます。

それには、次の段に移す小節にキャレットを移し「段落>段落の改行」(ショートカットは、Alt+Enter)で行います。

段落内の音符が少なくて目の移動が多くなる場合(または、改ページの都合で段落内に詰め込みたい場合)は、後ろの段から小節を移動させます。

それには、前の段に移す小節にキャレットを移し、「段落>前段落へ繰り上げ」(ショートカットは、Alt+Backspace)で行います。

ここでショートカットを使う場合注意することがあります。それは Altキーを間違えて他のキーを押してしまうことです。こうすることで意図しないことが起きる可能性があります。私は、Altキーと間違えて Fnキーを押すことがよくあります。Fn+Backspace でキャレットのある音符を消してしまいます。

このような事故を防ぐために、私は「エラー表示」をONにしておきます。つまり、下のように、右下のエラー表示のランプが青になった状態にしておきます。こうしますと、音符が消されたために小節内の音符と休符の長さの合計が正しい長さにならないので、小節が青く表示されて、誤って音符や休符を削除したことがわかります。

私は段落内の小節の調整は次のことを考慮して行っています。

  • フレーズの切れ目で段落を変えるなど、できる限りフレーズを意識した譜割にする。
  • できれば全休符小節を段落の最後に持ってくる。
  • 4分音符や8分音符の箇所は少し余裕をもたせた音符の間隔にする。
  • 16分音符が連続する所は、音符が重ならなければある程度込み合った方が読みやすい。奏者は譜を読むのに忙しいので、目の移動は少なくする。

2.2.2 時々ページ内の段落数を初期化する

段落の繰り上げや段落の改行を頻繁に行っていると、下のように段落間の空きが生じることがあります。

この結果、最初設定した1ページ12段のページレイアウトが崩れてしまいます。この状態にしておくと、後で不都合が生じます。これを設定どおりの段数にするために、ページを初期化します。それは、「楽譜の設定」の「五線」を表示して「OK」をクリックすることで達成できます。

このように、最初設定したとおりの段落間隔になります。

この時注意することがあります。

それは、「五線」を表示してOKをする前に段落のロックをすることです。メニューから

段落>全ての段落のロック>全ロック

を実行しておきます。これをしないと、せっかく調整した段落内の調整が元に戻ってしまいます。

2.2.3 改ぺージの時の配慮

曲が長い場合は、どこかで必ず改ページが必要になります。見開きの左ページから右ページに移る場合は問題ありませんが、右ページ(奇数ページ)から次のページに移る時は譜めくりが必要になります。

奏者が弾きやすい楽譜にするには、譜めくりの必要な改ページの前に全休符の小節を入れるように調整するのが理想です。

私の考える譜めくりの考慮は次のようなことです。

  • 譜めくりのところに全休符の小節を持ってくる。速い曲ではさらに2小節以上の全休符小節を持ってくる。
  • 全休符小節が見つからない場合は、単純な音符の並びの場所を探して改ページする。(オーケストラの弦楽器は、たいがい複数奏者がいて2人でペアを組んでいるので、1人が譜めくりして1人が演奏できる)
  • 繰り返し部分は見開きの範囲内に収まるようにする。(D.C.とダルセーニョも同じ)

しかし、このような場所がページの12段目(設定で1ページ12段としている場合)にあるとは限りません。無理やり12段目の最後に持ってこようと、音符を詰め込んだり、逆に音符の間隔を広げすぎても奏者は弾きにくいです。

この場合は、12段にならなくても途中でページ替えします。この時注意があります。

段落の「改ページ」を使わない

メニューの「段落>改ページ」を使うと便利なように思いますが、これを使うと、2.2.2 で書いたように「楽譜の設定>五線」でページの段落数の初期化をしたときにメチャメチャに崩れてしまいます。

あくまで1ページ12段になるように、ページの最後まで空白の小節を入れてマスクするようにします。

このようにすると、小節番号が連続でなくなります。ではこれを不完全小節にしたらどうでしょう。不完全小節は1小節と考えないはずです。

不完全小節が2小節以上続くと1小節と見なされる

スコアメーカーでは、連続した2小節以上の不完全小節を1小節と見なして小節番号が1だけカウントされるようです。これは何小節あっても同じです。ですから、不完全小節に頼ることはできません。

改ページした先頭の小節を正しい小節番号に設定し直す

曲の先頭小節の小節番号を1に初期化したように、先頭小節のプロパティを表示して、小節番号を連続した正しい小節番号に設定し直します。

2.3 曲を順次挿入してパート譜全体を作り上げる

このように、オペラや組曲のそれぞれの曲を、パート毎にスコアからコピーして調整していきます。

2.3.1 次の曲の調整の注意点

次々と曲をスコアからパートをコピーして、このパート譜の後ろに挿入します。この時、曲のタイトルが入りますので、1段以上の空白小節の段を入れ、これをマスクします。

この時注意が必要なのは、

  • タイトルと共にテンポ記号を忘れない。
  • 小節番号を1に初期化する。
  • 調号を変更する。

これらの要領は2.1 で書いたことと同じです。

さらに、通常新しい曲の始まりはページ替えします。この要領は2.2.3 と同じです。

なお、後ろの曲中の譜めくりの関係から、あえてページ替えせずに、適当なスペースを空けて新しい曲を開始することも考えます。

2.3.2  1曲ごとに全体の小節数をチェックする

曲の調整の途中でどのような誤操作をしているかわかりません。最大のミスは小節を削除していることです。1曲の調整が終わったら、最終小節の小節番号を確認することです。このことで、ページの途中で改ページした時の小節番号の連続化し忘れのミスも防ぐことができます。

2.3.3 適宜ページの初期化をする

このように、段落内の調整、適切な改ページなどの調整を行っても、途中に設定どおりのページ内段落数(ここでは12段)になってない部分があると、「楽譜の設定>五線」でページ内段落数を初期化(12段)した時にガタガタに崩れて、せっかくの調整が無駄になることがあります。

この事故を防ぐために、時々陥落の「全ロック」をして、「楽譜の設定>五線」で初期化しておくとよいのです。

3.  ページ数が多くなると処理が遅くなる

ページ数が多くなるとスコアメーカーの処理が極端に重くなり、反応が遅くなります。PCの性能にもよりますが、私の今の低スペックのPCでは、わずか1つの音符を入れるだけで10秒もかかるようなことがあります。20ページが限界かと思います。

このような場合はファイルを分けます。パート譜を分割して作成してからPDFに変換し、PDFの編集機能で接続します。

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