スコアメーカーでスキャンやPDFファイルからスコアを取り込むポイント

私は、スコアメーカーで印刷されたスコアをスキャンしたり、PDFファイルのスコアから取り込むことがよくあります。

スコアメーカーはこの取り込み機能が優れていると思います。特にスコアメーカーZEROの「AI認識」は優れていて、状態がよければ95%以上の認識率があり、Finale やSibelius を凌ぐのではないかと思われます。もっとも、Finale やSibelius に印刷楽譜やPDF楽譜を取り込む認識機能があるのかどうか知りません。

長い間スコアメーカーの楽譜認識を使用してきて、ポイントと思われることや注意することをまとめてみました。使用しているのは、スコアメーカーPlatinum およびスコアメーカーZERO Platinum です。取り込む楽譜は主にオーケストラスコアです。最終的にはスコアからパート譜を作成するのが目的です。

スコアメーカーの楽譜認識のステップ

スコアメーカーは次の4つのステップで楽譜を取り込みます。

  1. ページ登録
    印刷した楽譜をスキャンするか、PDFファイルから読み込んで楽譜を登録します。
  2. パート構成
    スコアのパートを識別します。何ページかにわたる場合は、各パートが順序通りに正しく配置されているか決めるもっとも大切な作業です。
  3. 五線記号
    音部記号や小節線など、楽典に従った線や記号が正しいかを確認します。
  4. 認識実行
    五線や音符・休符、すべての記号を認識して、スコアメーカーで処理できる楽譜を作り上げるもっとも重要なステップです。最終的な楽譜ができあがります。

1.ページ登録

ページ登録には2つの方法があります。

  1. スキャン
    印刷された楽譜をスキャンして取り込む
  2. ファイルから
    PDFファイルから取り込む
スキャン

複合機等のスキャナーが必要になります。印刷された楽譜の質に大きく左右されます。一般に五線間隔の狭い楽譜は認識率が低くなります。五線の間隔に従って解像度を設定します。

スコアメーカーでは、最適な解像度として、次の式から得られる値に近いか少し高い解像度を推奨しています。

(7×350) / 五線の高さ(mm)

しかし、私の経験から解像度を上げても認識率が良くなるとは限らず、低くした方が認識率が良かったことがあります。印刷の質が影響するようで、解像度を上げることによってシミや汚れなどを誤判定してしまうのかもしれません。解像度を変えてみて、その印刷物に最適な解像度を探すとよいようです。

PDFファイルから

PDFファイルから取り込む方法は、解像度の設定はありません。

ファイルの取り込みたいページを指定してOKをすると、しばらくして読み込まれます。

スキャンも、ファイル読み込みも登録されると次のようになります。

2.パート構成

パート構成をクリックすると、一瞬にしてこのような色分けされたパートが現れます。

右側の「パートリスト」は、左メニューのトランペット印をクリックすると現れます。

この「パート構成」が一番大切な作業になります。ここで間違えると、できたスコアがめちゃめちゃになり、修正が大変になります。最悪、やり直しということになります。

ここでの作業は次の4点です。

  1. 単独譜表、大譜表が正しく判定されているか確認する
  2. 段落が正しく判定されているか確認する
  3. パート名を正しく決める
  4. 各段(ページ)のパートを正しく対応づける
単独譜表、大譜表が正しく判定されているか確認する

ピアノやハープの大譜表が分かれて単独譜表になっている場合があります。逆に、上下の単独譜表が大譜表と判定されている場合があります。パート構成上誤りなので修正します。

上の写真の 17,18 はハープですが単独譜表に分かれてしまっています。これを大譜表に変更します。

大譜表にしたい上のパートを右クリックするとポップアップが表示されます。

大譜表を選択すると大譜表に変更されます。

Piano になっていますが、あとで変更します。

逆に大譜表を単独譜表に変更するには、先ほど変更した大譜表で試してみると。右クリックするとポップアップが出るので、単独譜表を選択すれがいいわけです。これは正しいのでここではやりません。

段落が正しく判定されているか確認する

ここで確認することは、段落が正しく判断されているか確認することです。

オーケストラスコアは、全休符小節が長く続くパートがある場合は省略されて音符のあるパートだけを表示し、1ページに複数段あることがあります。その段落が正しく判定されているかを確認する必要があります。これをしないとスコアがめちゃめちゃになってしまいます。

2ページ目に青い横線が入っています。これは段落が正しく判定されています。

右のように誤って段落判定されていた場合は、青い線上にマウスオーバーすると分割の印が表示されるので、クリックすれば青い線が消えて段落も消えます。

逆に本来の段落のところで青い分割線が表示されていない場合は、左端の縦線の切れ目の部分にマウスオーバーすると、挿入の印が表示されます。

パート名に隠れて境目が分かりにくい場合は、拡大するとよいです。

挿入の印をクリックすると、このように青い分割線が入ります。

パート名を正しく決める

以上で準備ができましたので、ここでようやく正しいパート名を決めていきます。

すでに正しいパート名が入っているところはそのままにして、間違ったパート名が入っているパートや決まっていないパートを決めていきます。

パートリストの誤った日本語パート名が現れている(またはーーー)をクリックするとパートを選択するポップアップが現れますので、パートを選択して決めていきます。

上の画面では、パートNo.12 の次が 14 になっていますが、順序はこのままににしておきます。後ろのページで、13 は誤って新しいパートに割り当てられてしまっているためです。あとで正しいパート名に対応付けしたときに正しい番号になります。

ほとんどの場合、最初のページにその曲で使われている全パートが揃っているので、一通りパート名が決まると次のようになります。

各段のパートを正しく対応づける

これからの作業が最も難しく時間のかかるものです。これを慎重に行わないとスコアがめちゃくちゃになります。

3ページ目のピッコロは違います。オーボエです。2ページ目に正しいオーボエのパートがありますから、2ページ目のオーボエのパートをクリックして3ページ目のピッコロのパートにドローイングします。(薄い線が表示されています)

パート名がオーボエに変わりました。

右側のピッコロはフルートです。しかし正しいフルートのパートは左側にありません。下のフルートは間違っているので、これからドローイングすることはできません。実は正しいフルートはもう1ページ前にありますが見えません。

パート構成メニュー左下の折り畳みをクリックして折りたたんで、1ページ前のフルートのパートからドローイングして正しく対応づけます。

あるいは、パートリストのフルートからドローイングして対応づけることもできます。

パートリストを左右に移動して五線に近い位置に持ってきたり、パートリストの中も上下にスクロールして五線に近い位置にできるので便利です。

ただし、この方法は時々おかしな動きをすることがあって、ずたずたに崩れたことがあります。なるべく楽譜の中で対応づけた方がいいようです。

このようにして、最初のページから正しいパート名を対応づけていけば、最終的にパートNo も1から順に正しく揃います。

スコアの最初のページに使用するパートがすべてそろっていれば問題ないのですが、途中から追加パートがでてくると難しいです。ソロパートなど追加ででてくる場合があります。このような時は、追加で出てくるパートの入る位置を考えておく必要があります。最終的にパートNo が数字の順序通りになるようにします。

3.五線記号

五線記号ステップの主要作業は小節線が正しく認識されているか確認することです。

認識された小節線は水色のラインが表示されています。これが表示されていない小節線があったら、左メニュー五線記号の「+」マークを選択して、認識されていない小節線の上でクリックすると右のポップアップが出て、「小節線追加」をクリックして現れる小節線の種類を選択します。

最近のスコアメーカーZEROでは右のように親切に判断してくれます。

この確認が漏れると、出来上がった時右のように2小説分の音符が1小節に入りエラーとなります。小節線を入れればいいのですが、パートによって小節線の位置が合わず、音符の移動が必要になります。

五線記号ステップではこの他に、音部記号、拍子記号の確認がありますが、これらは出来上がってから簡単に修正できます。

4.認識実行

これでいよいよ最終の認識実行ステップです。最終的なスコアを完成させます。これには時間がかかります。

「認識実行」をクリックすると、スコアメーカーZEROでは右のポップアップが出ます。

「AIを使って認識実行」を選択するのが断然良いです。認識率がすごく違います。

認識実行後のスコアです。

ハープに2小節ほどエラー表示がありましたが、わずかの修正で済みます。最終ページの細かい音符もきれいに認識されています。スコアメーカーZEROの認識率はすばらしいです。

認識したスコア譜のチェック

認識実行でできたスコア譜を、元の印刷楽譜やPDFをもとにチェックします。その前に、

段落>全ての段落のロック>全ロック

で、小節が前後の段落に移動しないようにしておくとよいです。

認識されたスコア譜は、元のスコアと同じ段落構成になっています。つまり、段落の中に入っている小節が元のスコアと同じになっています。そのままの方が元のスコアと比較しやすいからです。そのために段落を全てロックして、小節が移動しないようにします。

音符、休符、演奏記号のチェック

まずチェックすることは、音符、休符、演奏記号が元のスコアと同じかチェックすることです。

最近のスコアメーカーZEROの認識は優秀で、音程を間違えていることはまずありません。時々音符や休符が抜けていたり、長さが違っていることがあり、エラー表示されているので見つけやすいです。それにしても一応ざっとチェックして、パートごとにあるいはセクションで演奏させて間違いがないかチェックするだけで十分でしょう。

あとは演奏記号の抜けや誤りがないかチェックします。

演奏記号のチェックで注意することは、上下のパートの演奏記号が間違えて入っていないかチェックすることです。パート数が多くてパート間の間隔が狭い場合は特に注意する必要があります。このチェックをしないと、パート譜に変換したときに演奏記号が抜けてしまいます。

確認するにはマウスオーバーすればわかります。上の黄色のクレッシェンドは C.Bsn のものなのですが、下の Hrn 1,2 のパートに入っています。薄い水色の枠の中にあることでわかります。これをマウスで上に移動させます。

これで、C.Bsn の青い枠の中に入りました。

上下のパート間隔が狭い場合はすべての演奏記号についてマウスオーバーして確認する必要があります。

演奏するときは管楽器のキーの確認が必要

演奏させてチェックするときに注意点があります。それは管楽器のキーの確認です。

2.パート構成の、パート名を正しく対応させる
のところで選択したパート名では、クラリネット、トランペットなどはB♭、でキーが設定されています。しかしこれらの移調楽器は他のキーで演奏されることも多いので、元のスコアのキーに合わせなければ、演奏したときに正しく聞こえません。

例えば今取り込んでいるスコアで、トランペットのプロパティを見ますと、「キー」が -2 に設定されています。

このスコアではキーはAなので、「キー」に -7 を入れてEnterキーを押します(Enterキーを押さないと反映されません)。これでキーが正しく設定されます。

キーはB♭(-2)、A(-3)、F(-7)、E(-8) などです。C から半音ずつ数えた数値になります。数値を確認したいときは、「新規作成」でパートを追加し、その時のパート設定の「キー」をクリックしてみると、下のようにキーとキー値の一覧が表示されるので便利です。

演奏してみて管楽器がおかしいときは、キー値を確認するとよいです。

省略されたパートのある段落について

長い全休符のあるパートは、省略されて表示されていない段落があることがあります。全パートが揃っていれば1ページに収まるスコアが、1ページに複数の段落が入ることになります。

この時、省略されたパートはどうなっているでしょう。

「マスク表示」をON にすると、薄い線がいっぱい表示されているのがわかります。これは、省略されたパートがマスクされて折りたたまれていることを示しています。

これを全パート表示するにはどうすればよいでしょう。

全パートを選択してプロパティを開きます。現在ON になっているマスクをOFF にします。(チェックをはずす)

マスクがはずれて五線が表示されるようになりました。折り畳みはまだあります。

「楽譜の設定」の「五線」で間隔を指定してOK をします。

省略され隠れていたパートが表示されるようになりました。左のパート名がないのは、まだ短縮パート名を指定していないためです。

省略されていた部分の全休符はこれから入れます。

省略されていたパートは折りたたまれてマスクされていただけで、実際には存在します。ですから、省略表示のままでもパート譜変換は正しく行われることがわかります。

カデンツァの部分は全パート展開しない

ここで、全パートを展開しない方がよい場合もあります。カデンツァの部分です。

ハープのカデンツァです。マスク表示すると、他のパートが折り畳まれていることがわかります。この部分は折り畳まれた状態で残します。そのために、このような部分があるスコアは、スコア全体のパートを選択するのでなく、展開する部分の小節範囲を選択して展開するようにします。

これでスコアが完成しました。このスコアからパート譜変換でパート譜を作成していきます。

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