【実践】スコアメーカーでスコアからパート譜を作成する

スコアメーカーでは、「パート譜の作成」をクリックすると、簡単にパート譜が作られます。しかし、そのまま演奏用のパート譜としては使えません。演奏しやすいパート譜にするには、いろいろやらなければけないことがあります。私が日ごろ実施している手順をまとめてみます。

スコアは、スキャナーやPDFから取り込んだり、打ち込んだりして一通り完成しているものとします。

パート譜の事前チェック

まずは、事前チェック用のパート譜を作ります。

対象のパートを選択して、ファイル>パート譜の作成 をクリックします。

「パート譜作成オプション」が表示されます。ほぼこのままですが、「長休符変換」だけはチェックをはずしています。長休符は、パート譜を見ながら自分で変換します。自動で長休符変換していると、思い通りの変換にしたい時に一度長休符を戻す手間がかかるためです。

パート譜が作成されました。しかし、このままでは演奏に使えません。

これを見ただけでも次のような問題が見えてきます。

上の段と下の段の演奏指示記号が、重なったり近づきすぎて演奏しにくい
不要なト音記号が入っている
長休符変換をする必要がある

さらに長い曲では、ページ数を減らして譜めくりを少なくしたり、譜めくりが必要な奇数ページの最後に休符小節を入れるようにするなどの調節が必要です。

それでは、これらの調整にはいりたいところですが、その前に、正しくスコアが作られているか確認する必要があります。いわば、正しくパート譜に移行できるようにスコアが作られているかの確認です。そのために、一度パート譜に書き出して、思い通りに記号などが表現されているかチェックします。そして、間違いをスコアに反映させます。これらの間違いは、パート譜にしてみないと気がつきません。

もっとも多いのが、段を間違えて記入しているために、パート譜に正しく反映されないことです。

スフォルツアンドの前後にクレッシェンド、デクレッシェンドの記号が入るはずですが、それが入っていません。しかも上のおかしなところに入ってます。これは、段を間違えて記入したためです。

スコアでは正常に見えますが、マウスをかざしてみますと、実は下の段の領域に入れていたのですね。ブルーの四角が、この段のこの小節の領域です。さらに上についていた記号は、上の段の記号を、この段の領域に入れていたためです。このような場合、元のスコアの間違った記号を削除して正しい領域に注意深く入れなおします。スキャナーやPDFから取り込んだとき、認識ミスで間違えることもあるし、打ち込んだ時も、どんなに注意しても間違えることがあります。スコア作りに夢中になっているときはなおさらです。

正式なパート譜は、このような修正が全て終わった後にもう一度作成しますから、ここではパート譜は修正しません。

このような、段を間違えて記入してる恐れのあるのが、強弱記号、奏法記号といった、対象が特定パートになっている記号です。対象が全パートになっている記号は、一つ記入すれば全パートに表示されるので間違えることはありません。

納品用パート譜の作成

これまでのチェックでスコアが正しく作成されました。これからパート譜を作成すれば、さまざまな記号を含めて正しく記入されているはずです。

ではスコアメーカーで「パート譜の作成」をしたらそのまま演奏用に使えるかというと、そうではありません。まだまだ調整することがいっぱいあります。これからが時間を要するところです。

長休符変換

再び「パート譜の作成」をして、まず、長い休符が連続している部分を長休符に変換します。その時気をつけることは、

出だしの小節のある前のリハーサルマークを残す
出だしの前にフェルマータや rit. などテンポが変わる所を明確にしておく
長休符中に拍が変わる所を明確にしておく

といったことです。演奏者が間違いなく出られるよう配慮します。

場合によっては、長い休符のあと、出だしの前に他のパートのメロディーを表示して出やすくする必要があります。

 演奏記号の位置の調整

スコアからパート譜に変換したときに、スコアでは適切な位置にあったものが、パート譜ではずれていることがあります。これは、段落の間隔や小節の長さがスコアとパート譜で異なるのでしかたのないことと思います。

一番上の「rin ・・・」は上の段についているものですが、下の段と見まちがえそうです。下の2つは重なっています。これらを移動して調整します。

このような見直しが、強弱記号、速度記号、発想記号、奏法記号、リハーサルマークについて必要です。

音符の配置バランスの調整

「パート譜の作成」をした時に、下のような不要な全休符が入ることがあります。なぜ入るのかは不明です。この曲が、6/8と2/4のパートが同時に進行しているからかもしれません。

演奏してみると、各小節の最後に不自然な休止が入ります。これを削除してみると、

このように、前詰めになって、各小節の最後に不自然な空きができます。ただし、演奏は正しく行われます。パート譜として使うには、この不自然な空きは困ります。そこで、あえて全休符を入れて、この全休符をマスクしてみます。

全休符を右クリックしてプロパティを表示し、「マスク」にチェックを入れます。そうしますと、パート譜上は見やすい楽譜となります。

またこの曲のような特殊な場合ですが、一部のパートだけ拍子記号が変わる場合、変わらないパートの小節の頭に拍子記号がマスクされて入っていて、むだな不要な空きが入っていますので、これを削除します。詳細は下記ブログで説明しています。

オーケストラ曲の中には、パートによって異なる拍子の曲があります。例えば、ウォルフーフェラーリの「聖母の宝石」第一間奏曲です。 全体は6/8ですが、バイオリンのあの切ないメロディーの部分は、2/4と6/8が交互に出てきます。 ...
譜めくりを考慮した小節の配置

3ページ以上になる楽譜は、必ず譜めくりが発生します。譜めくりしやすいよう、休符小節(できれば長休符)を奇数ページの最後に持ってくるように、小節を選択して「段落の改行」や「前段落へ繰り上げ」をします。場合によっては、休符小節の次の小節を強制的に改ページします。

奇数ページの最後に休符小節をもってくることで、演奏が中断せずに譜めくりができるようになります。

ここで、「段落の改行」や「前段落へ繰り上げ」をすることによって、演奏記号が再び乱れることがあります。これを調整して移動すると、段落の改行や繰り上げが元に戻ってしまうことがあります。その場合再度「段落の改行」や「前段落へ繰り上げ」をしなければならなくなります。

こういう事態を防ぐために、「段落ロック」をします。「段落ロック」は、

メニューの段落>全ての段落のロック>全ロック

でロックできます。ロックされたか確認するには、右の表示パネルを開きます。

「属性」の「段落ロック」にチェックを入れる(すでに入っていたらチェックしなおして)ことで、ロックの印が表示されます。このロックのマークをクリックすると○の印になって解除されますので、段落の変更をしてまた○をチェックしてロックをかければよいです。

ページ全体を整える

「長休符変換」や「前段落へ繰り上げ」をすると、下のように、次ぺージの前があいてしまいます。

このような場合は、「楽譜の設定」画面の「五線」か「用紙」を開いてOKをクリックするだけで、正常になります。

ただし、「五線」の場合は、右の四角で囲んだ部分で「間隔を指定」が有効になっている必要があります。デフォルトは「変更しない」になっています。

あるいは、「用紙」の場合、「余白」を変更している必要があります。デフォルトは15mmになっています。

ここでは、用紙の余白を変更してみました。

次ページも先頭から表示されるようになりました。

以上の作業の後ようやくパート譜が完成します。けっこう時間がかかります。

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