#新型コロナウイルス の感染拡大が止まらない。2021/7/27 には、5月連休のピークを一気に越えてしまった。この勢いだと、今年1月のピークを越えるのは時間の問題だ。
この状況下で、公明党の石井幹事長は次のようにコメントしている。
「2週間前の状況が反映されている。東京五輪が開幕したからではない」と述べた。最多の理由を「緊急事態宣言に慣れてしまった」
新型コロナ: 東京のコロナ感染最多「五輪開幕は無関係」 公明幹事長: 日本経済新聞 (nikkei.com)
それは違う。「緊急事態宣言に慣れてしまった」のは、国民に外出自粛を呼び掛けていながら、五輪を強行開催したことが原因なのだ。「2週間前」と言うのならば、それは聖火ランナーが盛んにトーチキスのお祭り騒ぎをしていた時期だ。このお祭り騒ぎがテレビで放映されれば、緊急事態宣言を誤って受け止める若者が増えるのは必至だ。
このことを証明する記事がある。
五輪中の居酒屋は「20時でも満席だった」 米紙記者も驚いた混雑ぶり…店内写真に波紋広がる: J-CAST ニュース【全文表示】
写真には、多くの人が店内でマスクをつけず飲食を楽しむ姿が映っている。投稿によれば、時短営業の対象となる20時以降も店内の混雑ぶりは変わらず、ほとんどの人は店内のテレビで東京オリンピックの試合を観戦していたという。
Twitter でも拡散され、海外と思われるユーザーから、こんな投稿が寄せられている。
「クレイジーだ! 日本では今週、COVID19の記録的な感染者が報告されたばかりだというのに、レストランの客がマスクをつけずに近くに座っていてもいいというのか?」
「今、社会の歯車が外れつつあるのかもしれません。もう誰も気にしていないようです」
「これは問題だ。誰も耳を傾けない。誰もがルールに従わなくていいと思っている。あなたはそうではありません…」
若い人の緊張感が崩れていることがよくわかる。五輪のせいだ。
このまま何らの策を講じないで放っておくと、すぐに1万人を超えて、その先は青天井という事態になる。そのようになってからでは遅い。
今すぐ五輪を中止して、これまでにない厳しい緊急事態宣言に切り替えなければ日本は危ない。まず政府が決意を示し、強いリーダーシップをとることが必要なのだ。
姜尚中氏は、「東京オリパラを中止することで、初めて国民は違うメッセージを与えられる」と言う。その通りだ。
姜尚中氏、感染急拡大に東京オリパラを「中止することで初めて国民は、違うメッセージを与えられる」 : スポーツ報知 (hochi.news)
新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長も8月4日、衆院厚生労働委員会の閉会中審査でこのようにおっしゃっている。
「(大会関係者が外部と接触しない)『バブル』の中での(関係者の)感染が、急激な感染拡大に直接関係しているとは全く思わないが、オリンピックをやるということが人々の意識に与えた影響はあると思う」
尾身氏「五輪が人々の意識に影響した」 感染拡大、人流減らず | 毎日新聞 (mainichi.jp)
さらに次のように、菅首相らのリーダーシップにも忠告している。
「政治のリーダーたちのメッセージが一体感のある強い明確なメッセージじゃなかったというのもある」
まったくこのとおりだと思う。
2021/8/8 追記
次の記事では、感染症対策に人間の心理がいかに大切かを説いている。単に緊急事態宣言を出せばいいというものではない。
感染症対策「人間の心理を加味して」 専門家、五輪開催の影響を指摘 | 毎日新聞 (mainichi.jp)
ここに、私の言いたいことが専門的に集約されている。
<<2021/8/9 追記>>
医療機関でも五輪開催以降逼迫が続いている。
<五輪リスク>病床ひっ迫 重症以外、受け入れ余裕なし 開催反対訴えた 立川相互病院の南條医師 「開会後 患者が急増」:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)
南條医師の言葉が紹介されている。
五輪開催と感染者急増の因果関係は「説明は難しい」としながらも「五輪開催は国民に行動を自粛しようというメッセージにはならない。国立競技場前の人だかりや五輪のシンボル前の行列をテレビで見て衝撃を受けた」と話した。
私も同じように感じている。
同じ立川相互病院の高橋院長も同じだ。
病院の窓に「もうカンベン」「五輪やめて」訴え続けた院長が憤慨 手のひら返しのテレビ報道に苦言も〈dot.〉(AERA dot.) – Yahoo!ニュース
「感染者数の推移をみれば、五輪の強行が感染爆発の原因となったことは明らかです。五輪開催に向かう中で、多くの人たちの気が緩み、自粛をやめてしまったことが主因だと考えます」
「五輪と感染爆発の因果関係を示すエビデンスはない、という指摘をする方がいますが、現在進行中の事象に対してエビデンスを構築するのはたやすいことではありません。しかし、(7月22日からの)4連休後に爆発した感染者数の推移を見れば、五輪が原因となっていることは明らかです。菅首相も小池都知事も、五輪のせいだとは絶対に言わないでしょうが、これだけ感染が増えているのに即座に五輪を中止しないのは、もはや倫理的にも問題ではないかと感じています」
この現実を、菅首相や小池都知事はどうして無視して「コロナと五輪は関係ない」と言えるのか。小池氏はロジカル・シンキングのできる人と思っていた。しかし五輪に関しては全くの主観でしか考えていない。
この記事ではさらに次のように指摘しています。これが実態です。
菅首相は大会中、「人流が減っている」として中止を否定し、小池都知事は五輪のテレビ観戦により「ステイホームにつながっている」などとプラスに評価した。だが、実際はどうか。会場のそばに出向き競技が見える場所を探して観戦した人もたくさんいて、中には観戦者が殺到して密が生まれたケースもある。「五輪を強行するのだから、もう都の要請は聞かない」と、五輪開催をきっかけとして通常営業に踏み切った飲食店も多くあり、店をのぞくとたくさんの客が詰め掛け、酒と、マスクなしでの会話を楽しんでいる。
ワシントン・ポストは東京五輪を冷静に分析している。
東京五輪が感染爆発を招いたと米紙が猛批判「日本社会に傷跡を残した」(東スポWeb) – Yahoo!ニュース
とてもよい分析なので文末に東スポの全文を載せる。
日刊ゲンダイも辛辣で小気味よい評価をしている。これも文末に全文載せる。
【東京五輪】菅首相が招いたコロナ禍の“無間地獄”…数字が証明する無能・無策ぶり|日刊ゲンダイDIGITAL (nikkan-gendai.com)
<<2021/8/26 追記>>
医療関係者の方はほとんどが「コロナと五輪は無関係」という主張に否定的だ。医師で作家の夏川草介さんのこの記事に代表されていると思う。
1分も見なかった五輪 かけ声だけの政治に初めての怒り:朝日新聞デジタル (asahi.com)
五輪会場周辺は連日の人だかり
五輪会場周辺は、開会式以来連日の賑わいをみせている。
国立競技場周辺は密状態、外国人「エンジョイジャパン!」若者「フーッ!」(日刊スポーツ) – Yahoo!ニュース
五輪マークモニュメント周りは、「興味本位で」とか、「子供たちの記憶に残したい」などと、記念撮影をする人たちでにぎわってる。
開会式開始ごろの国立協議s上周辺は、身動きのできないほどの「密」状態である。
東京五輪「無観客」のはずが大混雑 国立競技場に沿道に…人だかりで感染不安: J-CAST トレンド【全文表示】
五輪選手村は無法地帯
大会外だけの問題ではない。大会の中でも感染爆発が起きかねない状況だ。
五輪選手村で連日“野外パーティ”の乱痴気騒ぎ動画 組織委も警察も制御不能の呆れた実態(デイリー新潮) – Yahoo!ニュース
特に外国選手が、連日乱痴気騒ぎをしているというのだ。警備は手の出しようがなく。組織委員会は見て見ぬふりの機能不全に陥っている。
このようなリスク管理は事前に十分してきたはず。
テレビのオリンピック一色ムードでコロナ感染の報道遅れる
もう一つ危惧しなければいけないのが、オリンピックが始まると、NHKは総も教育も24時間オリンピック中継で、たまのニュースもオリンピック関連のニュースが大半を占める。他の民放もオリンピック中継がほとんどだ。
この状況でコロナ感染拡大の報道が疎かになる。7月31には全国新規感染者数が12,000人を超えた。これがピークと思えない。さらに上を目指すと予想される。
しかし、オリンピックムードで、これらの大切な情報は国民に伝わらない。特に多くの若者は全く知らない。このことが危機意識の低下につながり、感染拡大が暴走する。
2021/8/8 追記
次の記事は、このことを如実に伝えている。
専門家が急遽出演ナシに…神戸大・岩田教授も「五輪がコロナ警告の機会を損失」と懸念 | 女性自身 (jisin.jp)
特にNHKはひどい。24時間オリンピック中継で、たまの15分程度のニュースもオリンピックのニュースばかりだ。中継中もL字画面も出さない。
菅首相と小池都知事は五輪がステイホームに繋がると言うが
この二人は、五輪がステイホームに繋がると言うが、「ステイホームに繋がるはずだ」と思っているに過ぎない。
次の記事を見よう。
「五輪がステイホームに効果あり」小池知事が豪語も人出増加中の矛盾(女性自身) – Yahoo!ニュース
テレビの視聴率は、ある時間に視聴している番組の割合である。どの局もオリンピック番組しかやっていないのなら、当然オリンピックの視聴率は上がる。また、私のように、オリンピック期間中はテレビをつけないのは視聴率には反映されない。
バッハ会長は、「日本人の10人に9人はオリンピックを見ている」と言うが、菅や小池から誤ったメッセージが伝えられている。
識者の冷静な分析に耳を傾けよう
次の現代ビジネスの記事は、示唆に富んだよい内容だ。
日本のコロナ対策はなぜ今“大失敗”しているのか?『最悪の予感』が教える「危機の本質」(下山 進) | 現代ビジネス | 講談社(1/5) (ismedia.jp)
この中では、マイケル・ルイスの「最悪の予感」を引き合いにして、「アウトサイダーだから見えること」を重要視している。
今回の五輪に関することでは、「1949年にモンタナ州で起こったこの山火事の現場におりたった15人の消防降下隊員の教訓」から、次のように述べている。
山火事における火勢の加速度的な高まりと「エスケープ・ファイア」を、パンデミックにあてはめるとどうなるのか、とカーターはこんな言葉を手帖に書き留める。
(1)感染症より速いスピードで逃げることは不可能。逃げようと思う時点ですぐそこまで迫っている。
(2)大切なものを見極め、それ以外はすべて捨てる。
(3)「エスケープ・ファイア」に相当する何かを見つけ出せ。
今の日本にあてはめれば、(1)はすでに手遅れだ。(2)については、多くの人が「人々の命」と「オリンピック」の選択を思い浮かべるだろう。オリンピックは、デルタ株の加速度的な広がりを考えれば「捨てる」べきだった。
では、今の日本に「エスケープ・ファイア」に相当するものはなんなのか?
私はひとつにはパラリンピックの中止があり、いまひとつには、学校の閉鎖があると思う。
パラリンピックの中止でオリンピックで緩んでしまった日本人はもう一度、事態の「緊急性」を認識するだろう。
五輪関係者は、五輪をやりとげることで頭がいっぱいだ。コロナ禍の中で五輪をやりとげたことを世界に示したいのだ。しかしそれは大きな賭けであり、現に8月8日に終了したオリンピックによる感染拡大のために犠牲となった方は少なからず、いや多くあると思う。その人たちの多くが、オリンピックと関係のない人達だ。
五輪関係者は、もう一度冷静になって、アウトサイダーの立場からこれからのパラリンピックを見直してほしい。
<<2021/9/1 追記>>
京都大学の西浦博教授は、嫌われても東京五輪を強く止めておくべきだったと後悔している。
西浦博教授の後悔 東京五輪を「嫌われても強く止めておくべきだった」 | 文春オンライン (bunshun.jp)
付録
東京五輪が感染爆発を招いたと米紙が猛批判「日本社会に傷跡を残した」(東スポWeb) – Yahoo!ニュース
東京五輪が感染爆発を招いたと米紙が猛批判「日本社会に傷跡を残した」
閉幕した東京五輪。その功罪は…
東京五輪は8日に閉幕したが、米紙「ワシントン・ポスト」は大会が感染爆発を招いたと猛批判を展開している。 【写真】タワマンから見たら大炎上していた国立競技場 同紙は「東京と日本全国でパンデミックは悪化しており、一様に(感染者数の)記録を打ち立てている。五輪の2週間の間に、1日あたりの症例数は4倍近く増加している」と日本での新型コロナウイルス感染拡大が極めて危険な状況に陥っていると指摘。そのうえで、東京五輪の開催強行が感染爆発を誘引していると分析した。 「大会組織委員会の橋本会長は五輪のバブルから一般大衆に感染が広がった医学的または科学的証拠はないと述べたが、多くの公衆衛生の専門家は説得できていない。彼らは五輪が、政府の説得力のない自制の呼びかけを弱体化させたと主張し、五輪のバブルは主催者の主張よりもはるかに多くの穴があると示した」と厳しく批判。そして、公衆衛生学の専門家で世界保健機関(WHO)で事務局長上級顧問を務めた渋谷健司医師の見解を紹介した。 「私はこの五輪の遺産について考えた。まずパンデミックに対処しない限り、安全で確実なオリンピックは幻想であることを明確に示した。大会は日本社会に傷跡を残し、分裂と不信、そして健康と経済的債務を引き起こした」と東京五輪の開催強行を糾弾した。 東京五輪の後に残った感染爆発。国民の苦しみはまだまだ続く。
【東京五輪】菅首相が招いたコロナ禍の“無間地獄”…数字が証明する無能・無策ぶり|日刊ゲンダイDIGITAL (nikkan-gendai.com)
菅首相が招いたコロナ禍の“無間地獄”…数字が証明する無能・無策ぶり
■記者会見でもマトモに答えず、のらりくらり
「いつまでこんな生活がダラダラ続くのか。国民の疲労や不信感はピークに達している」
質疑応答のトップに立った北海道新聞の記者は、「甘い見通し」「遅い対応」「不十分な中身」を列挙し、菅首相の政治責任を追及した。ところが、菅首相はマトモに答えず、のらりくらり。「一進一退の状況から脱して、決め手となるのがワクチンだ」とダラダラと話し続けた。
今年に入って菅首相が東京に緊急宣言を発令したのは1月7日、4月25日に続いて3度目。1月の発令から今回の期限の8月22日までの7カ月半、都民が「緊急宣言」も「まん延防止等重点措置」も出ていない状況で暮らしたのは、わずか21日間(3月22日~4月11日)に過ぎない。
これだけ長期間、不自由と我慢を強いながら、全く感染を抑え込めていない。きのうまでの全国の感染者数は累計81万人だが、宣言発令の1月7日以降が55万人と68%を占める。死者も累計1万4903人のうち、74%にあたる1万1082人が1月7日以降だ。菅首相の無能・無策ぶりは数字が証明している。
結果が出ないのは、同じ失敗を繰り返しているからだ。
GoToトラベルを年末まで引っ張り、遅きに失した1月の緊急宣言。短期集中をうたいながら、ハンパな中身でズルズルと長期化。2月末の関西3府県の前倒し解除で4月に関西は感染爆発。4月も6月も東京は、リバウンドの兆候がハッキリしていたのに、解除に踏み切り、2度とも大きな波に見舞われた。
失敗から何も教訓を得ない
変異株への対応も最悪だ。すでに英国で変異株が大流行していた昨年12月、空港検疫では英国から渡航の陽性者が1カ月で4人から19人へと約5倍増。英国株(アルファ株)が市中に入っている可能性を示していたのに、変異株を発見する検査をすぐには行わず、その後の市中感染を許してしまった。
その苦い経験を生かすことなく、4月にインドから渡航の陽性者が前月の8人から80人へと10倍に増えても、再び検査対応は後手。国立感染研の推計によると、今や首都圏では感染の約35%がインド株(デルタ株)に置き換わっている。
今回も宣言を発令しながら、五輪強行という矛盾した政策で失敗は濃厚だ。さらに、コロナの季節性が感染拡大を加速させる可能性がある。1月、3月、8月に流行のピークを迎える傾向が明らかになっている。医療ガバナンス研究所の上昌広理事長が言う。
「最近、世界的に流行が広がっていますが、要因のひとつが、季節性によるものと考えられます。日本でも、これから8月にかけて感染が拡大していく可能性があります。デルタ株の影響を考えれば、今年の春とはケタ違いの流行が起きてもおかしくありません。季節性の流行変動は既知の事実ですが、政策に生かされているとは思えません。例えば、季節性を踏まえていれば、五輪の開催は夏と冬の流行のはざまの秋に延期するなど、できたはずです」
失敗から教訓を得ず、科学的知見も生かさない。菅首相の失敗と国民の“生き地獄”は無限に続きそうだ。